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研究内容

酸化ストレス・小胞体ストレス応答と
糖尿病・動脈硬化

① 酸化LDL除去による動脈硬化進展抑制

当教室では酸化LDLが動脈硬化に関与している疫学研究などから、酸化LDLを特異的に除去すれば動脈硬化の進展抑制が可能となるのではないかと考えた。そこで動脈硬化モデルマウスに酸化LDLの受容体であるLOX-1を肝臓に過剰発現させ、血中の酸化LDLを除去することを可能とした。その結果、マウス大動脈における粥状動脈硬化進展が抑制された(図1)。

(Ishigaki Y, Katagiri H, Gao J, et al. Circulation 118:75-83, 2008)

図1

② CHOP欠損マウスと動脈硬化

近年、糖尿病の慢性合併症である動脈硬化と小胞体ストレス反応の関連性に注目が集まっている。小胞体ストレスとは細胞内で合成された蛋白質の折りたたみや切断、ジスルフィド結合、糖鎖付加などを行い、蛋白質の品質管理を行っているが、その処理能を超えると小胞体ストレス応答が起こる。その一つが細胞のアポトーシス誘導である。アポトーシスに関与する分子として転写因子CHOP(C/EBP homolougus protein)がある。我々は、動脈硬化モデル(大腿動脈カフ傷害後の内膜肥厚)において、CHOP欠損マウスは内膜肥厚を抑制できることを報告した。さらに、別の動脈硬化モデル(apoE欠損マウスとのダブル欠損マウス)においては、CHOP欠損が粥状動脈硬化の進展抑制を認めた。動脈硬化の形成には血管壁細胞(内皮細胞、平滑筋細胞など)と血球細胞(単球、マクロファージなど)が関与するが、骨髄移植の手法によりCHOPの動脈硬化には血管壁細胞と血球細胞の両者が重要であることを明らかにした(図2)。

(Gao J, Ishigaki Y, Yamada T, Kondo K, et al. Circulation 124:830-9, 2011)

図2

③ Bach1欠損による膵β細胞保護

β細胞はインスリン合成を主目的とした細胞であり、抗酸化系酵素の発現が極めて弱く、酸化ストレスに対して脆弱である。Bach1(BTB and CNC homology 1)はHO-1等の抗酸化系酵素の転写抑制因子であり、膵β細胞の生存やインスリン分泌にも関係していることが予想された。我々はBach1欠損マウス及び様々な糖尿病モデルを用いて検討し、Bach1欠損は薬剤誘発による高血糖や膵インスリン含有量減少を軽減することを発見した(図3)。また、この機序として膵β細胞のアポトーシス抑制、HO-1発現の上昇が関わっていることを報告した。

図1