研究内容

臨床研究

位相差トラッキング法に基づく血管弾性特性

糖尿病は動脈硬化症の危険因子であり、大血管症が生命予後を左右する。大血管合併症のスクリーニング検査として頸動脈IMT、脈波検査PWV、血管内皮機能検査FMD、血管MRIやCTなどが利用されている。しかしながら、既存の検査診断法では簡便性と早期動脈硬化の検出という点で不十分である。

東北大学工学部金井浩教授、長谷川英之准教授が開発した位相差トラッキング法による血管弾性特性は、図1のように血管壁内部の多数の測定点(1個の測定点は80×200μmの領域)における超音波信号の反射波の位相差をトラッキングするにより弾性率を得る。

図1

図2

図2に示すように症例Aと症例Bは 従来の頚動脈超音波検査法では両者ともIMT 0.5mmと正常範囲内であるが、本検査法では症例 Aは症例Bに比して血管硬化度が大きいことが分かる。我々は、本検査が糖尿病患者の早期動脈硬化の検出に有用であり、危険因子蓄積に伴う動脈硬化をIMT<1.1mmである早期から評価できること1)、肥満者の内臓脂肪蓄積が動脈硬化に及ぼす影響をIMTやPWVよりも鋭敏に評価できること2)などを報告してきた。現在は、本検査を早期動脈硬化性疾患を評価できるツールとして、入院患者と外来患者における動脈硬化惹起因子の特定についての臨床研究を行っている。

1) Okimoto H, Ishigaki Y, Koiwa Y, et al. Atherosclerosis 196:391-7, 2008)

2) Tokita A, Ishigaki Y, Okimoto H, et al. Atherosclerosis 206:168-72, 2009)